2020年6月16日火曜日

寿光イチオシの店 VOL.15 「文禄堤 茶味(ぶんろくつつみ ちゃみ)」

大阪の毎日のコロナ感染者がほぼ0になり、日常生活を取り戻そうとしています。
キタやミナミの繁華街の人出が戻るには、まだ時間がかかりそうですが、
ジモティ派は近場の名店で美食と美酒を楽しみましょう!
そんな寿光イチオシのヌーベルな割烹が、京阪電車沿線の守口市にある「文禄堤 茶味(ぶんろくつつみ ちゃみ)」さんです。
主婦の皆様にも、ランチが大好評ですよ!



歴史ロマンも薫る、カフェのような日本料理店
                                            
大阪の歴史を物語る、淀川の流れ。その南側にかつて延びていた「文禄堤」をご存じだろうか。かの豊臣秀吉が淀川の氾濫を防ぐために、文禄3年(1594年)戦国大名の毛利輝元、小早川隆景、吉川広家へ命じて建設。慶長元年(1596年)に完成し、堤防の上は大阪と京都を結ぶ最短路である京街道として、旅人の往来でにぎわった。今も往時の遺構を残す文禄堤は守口市のランドマークの一つで、風流にも店名に冠しているのが、日本料理店「文禄堤茶味(ぶんろくつつみちゃみ)」だ。こう聞けば、誰しも格式ある料亭の風情を頭に描きそうだが、思いがけず木肌を生かした建屋は山小屋風。カウンター6席、テーブル14席(4人×2卓、6人×1卓)の店内は瀟洒なカフェの雰囲気で、広い窓からの採光に木調のインテリアが映えている。




「主婦層を主とした女性のお客様に、たくさんご来店頂いてます。お料理のメニューは純日本料理のコースだけで、ランチ、ディナーともに3種類をご用意しています。敷居の高くない、親しみやすい日本料理。それでいて、一級品の味わいとしつらいが当店のテーマです」
若々しい精悍な笑顔で答えてくれたのが、オーナー兼料理長の船見拓也(ふなみ たくや)さん。文禄堤茶味をオープンして2年半を迎え、弱冠35歳ながら、地元ファンが称賛する和食の達人である。伝統的な京料理一筋に修業をした船見さんは仕入れ先との信頼関係を通じて、天然食材や国産品にこだわっている。冷凍物は一切使わず、旬の旨味や滋味を、腕によりをかけて引き出すのだ。また、彩りや美しさを演出する皿や器は味わい深い作家の品を選び、船見さんのこだわりが垣間見え、献立が進むほどにゲストは酔いしれる。ひときわ目を惹いたのは、重厚な土鍋の釜! 実は、炊き立ての土鍋ご飯がコース料理のメインディッシュと、船見さんは自慢する。さらにはコース料理の名脇役となる垂涎の日本酒も、みずから吟味する。
「常時10種類ほどを、ご用意しています。酒屋さん任せではなく、私の仕立てる料理とナイスペアになる美酒をセレクトしています」
日本料理には日本酒と、憎いセリフを口にしてくれる船見さん。その技が冴えるコース料理は、すべて税込みで、【ランチ】月 \1,800、雪 2,800、禄 \4,000 【ディナー】扇 ¥3,800、雅 ¥5,500、福 ¥7,000と、うれしくなるほどお手頃だ! 
 


建築学より料理の世界を選んだ、天性のセンスが光る!

文禄堤茶味の献立は、優雅さを演出する料亭料理とは一線を画すように、侘び寂びも感じる。
「店名にある茶味の由縁でもあるのですが、御食事のしめには抹茶を点てさせて頂きます。京懐石を基本にしながら、高尚な日本料理ではなく、身近な“晴れの日の膳”として楽しんで欲しいですね」
と船見さんはコンセプトを語る。そんな愉楽と癒しをもたらす仕立ての料理には、船見さんの来し方が隠し味となっている。小学生の頃から料理が大好きだった船見さんは、テレビの料理番組を見よう見まねで包丁を握っていた。ボーイスカウトに所属していたこともあって、キャンプでの自炊にも、そのセンスは光った。


「今でも当時の友人に会えば『いろんな手料理を作ってくれたよなぁ、うまかったよ!』と、思い出話をしてくれます」
高校生時代まで台所少年だったとはにかむ船見さんだが、進んだ大学では建築学を専攻。ところが、料理人への夢が、胸の中でくすぶり続けていた。一念発起して大学を辞し、調理師の専門学校へ入った。そして、本格的な京懐石の料理店へ入社。下積みから煮方、焼き方と修業を積み、13年目にして独立開業を成し遂げた。
「私は枚方や寝屋川に生まれ育ち、守口も好きな街。それに、ここの立地は京阪電車の守口駅へ通じ、人通りに恵まれています。ですから、店舗の建築時から『いったい、何ができるんだろう?』と地元の皆様が興味をもって下さったようです」
なるほど! 文禄堤茶味の木造りの店構えは、建築を学んでいた船見さんならではの設計にちがいない。そんな異彩を放つセンスが、ひと味ちがう日本料理に生きている気がした。



 目にも舌にも優しい、料理と日本酒の旨味に酔いしれる。

文禄堤茶味は、日本料理のコースがモットー。その中から、船見さんの技とセンスが光る二品をご紹介しよう。まずは、「前菜の盛り合わせ」。京懐石らしい上品な食材の仕立てに、器の彩りやしつらいの美しさも魅力的だ!大吟醸や純米大吟醸など、すっきりとした口当たりの淡麗な酒で膳を始めたい。


そして「お造りの盛り合わせ」は国産の天然物にこだわり、コースごとに4種類以上の旬の魚介類を仕立ててくれる。その日の入荷によって種類は変わるが、合わせる日本酒を船見さんにセレクトしてもらってはいかがだろう。忘れてはならない、土鍋ご飯としめの抹茶も絶品だ。


下町の風情を漂わせる京阪電車守口市駅から、ほど近い場所に佇む瀟洒な日本料理店。今宵は肩肘を張らず、ほっこりと気軽に親しめる文禄堤茶味で、船見さんの心づくしの日本料理を味わってみませんか。


■文禄堤茶味(ご予約を、おすすめします) https://chami.osaka/
大阪府守口市本町2-4-19
電話:.06-6991-3830
営業時間:(昼)
前半:11時半〜13
後半:1315分〜1445
*月コース(1800)は、2部制とさせていただいております。
(夜)18時~22
*夜は完全予約制。15時までにご連絡いただければ、当日のご予約を承れます。現在、「扇」3800円のみ、予約なしでも対応をしております。

定休日: 日曜日・第2・第4月曜日

2020年6月4日木曜日

寿光イチオシの店 VOL.14 「Ristorante Heiju」

春から初夏の旬の食材を実感する、ようやく気持ちの余裕が出てきたコロナ解除。
ランチとちょい飲みを兼ねた、イタリアンで日本酒!
そんなオシャレな日本酒タイムを楽しみたくなる絶品リストランテ、大阪市福島区の「Ristorante Heiju(ヘイジュ)」を紹介します。



至高のペアリングで魅了する、オンリーワンのイタリアン割烹。


誰にも教えたくない、とっておきの料理店。筆者が、この言葉を実感するイタリアン割烹をご紹介しよう。
場所は、梅田からひと駅の福島。ここ数年、天満と並ぶグルメスポットとして脚光を浴びているが、今回訪れたRistorante Heiju(リストランテ ヘイジュウ)がある界隈は、思いのほか閑散としている。下町の風情を残す通りに、瀟洒な雰囲気のHeijuの玄関を見落としてしまいそうだ。20146月にオープンし、グルメの口コミによれば「繊細すぎるほどの料理と酒のセレクトに、サプライズ必至!」と噂のHeijuは、完全予約制。若々しいオーナー兼シェフの吉野平十(よしの へいじゅう)さんの口から、驚きの言葉が飛び出す。


「当店は、料理も酒もメニューを用意しておりません。2つのコース(¥7,000と¥10,000/いずれも税・サ込み)のみですが、一人として同じ料理をお出ししない主義です。お酒は、100種類ほどストックしているワインの中、私がセレクトしてお楽しみ頂きます。日本酒は、一銘柄のみです。Heijuのコンセプトは、料理と酒のペアリングにあります」
はにかむような笑顔の端に、自信のほどが見え隠れする。料理のレシピは、その日の食材の仕入れによっても変わり、直前まで決めない。いつでも吉野さんの腕前と舌にかなう最高の食材を用意し、その旨味を生かした究極の美味しさを、千変万化に演出するためである。とりわけ魚介類にこだわる吉野さんみずから「イタリアン割烹」と呼ぶHeijuのゲストは、リピーターが多い。食通のゲストの舌と好みを吉野さんはつぶさに考え、毎回、趣向を凝らしたレシピで、もてなしているのだ。食材の目利きには、かつて大阪市中央卸売市場の鮮魚店で働いた経験が物を言う。


「イタリアンの店やホテルで修業しながら、中央市場で屈指の鮮魚店を掛け持ちして働き、自分の店を持つ夢に向かっていました。今も、その鮮魚店から食材を仕入れていますよ」
吉野さんが固いきずなを結ぶ鮮魚店からは、数少ない旬の魚や海産物が届き、その希少価値にも、Heijuに惚れ込む健啖家は舌鼓を打つ。日々、至高のイタリアン割烹を探求している吉野さんだから、さぞかし食べ歩く機会もあるはずと訊ねれば、意外な答えが返された。
「私、料理人仲間が少ないんです。まずは、自分が師匠と仰ぐ方とお付き合いさせて頂く主義。だから、Heijuに同業者のお客様はいらっしゃいませんし、グルメ雑誌などにも紹介されたことがありません(笑)」

 料理学校を卒業して、Heijuをオープンするまで、ひたすら自分を鍛えながら、脇目も降らず、着実に目標を達成してきたと語る吉野さんだけに、孤独な時も長かったはず。興味津々な吉野さんのプロフィールは後述するとして、筆者は、ありきたりな食雑誌やwebに、Heijuを紹介して欲しくはない。吉野さんの食と酒のペアリングをこの雑誌読者も一度体験すれば、納得するにちがいない。


勤勉努力と食育に支えられた、孤高のプロデューサー。

28歳でHeijuをオープンした吉野さんは、その繊細な料理と同様、30歳までには自分の店を持つ夢に向かって緻密な計画・設計を描いてきた。大阪の調理師学校を卒業後、数軒のイタリア料理店、一流ホテルの厨房で洋食修業を重ねながら、中央卸売市場の鮮魚店で早朝から働いた。寝る間を惜しむ努力を積み、個性あふれるイタリアンを追求。さらには、ワインに精通するため、北新地のワインバーに勤め、ソムリエの資格を取得している。着実に、スピーディーに歩む吉野さんの勤勉さが顕す才能に師匠たちは目をかけたが、同僚や先輩の一部は反目して、嫌われたり、妬みも買ったと振り返る。


「それでも、自分は常に最低のレベルで、上を目指すポジションが私の流儀なんです。『お前の作る料理は、本当に美味しいよ』と、いつもお客様の喜ぶ声が聞きたい。そのためには、自分の生きざまを曲げません」
 確固たる吉野さんの流儀には、少年時代の菓子作りと食通な父親の影響もあるようだ。母親の作るクッキーを真似して作り、友人たちへふるまったところ「超うまい!」と太鼓判を押された。百貨店のグルメ催事などの設営を仕事にしていた父親は、全国の美味を知り尽くし、魚介類は獲れ立て自慢の魚屋でしか買わず、家庭のおかずに本物の食材しか口にしなかった。いわば、“食育”に恵まれた家庭に育った吉野さんだからこそ、Heijuが生まれたと言っても、過言ではない。



「また来たい!」と言わしめる、感動と口福のメニュー。

さて、Heijuのコースから2品を紹介しよう。さりながら、その日、そのゲストごとに吉野さんが考え出す口福のメニューは、この限りではない。まずは「北海道産うにと黒丹波枝豆 フルーツトマトジュレを添えて」。甘味たっぷりな北海道の砂川産フルーツトマトの果汁をしぼり、ジュレに仕上げている。うにの甘味、丹波枝豆の風味が、白ワインに合いそうだ。日本酒は、山田錦の吟醸タイプがふさわしい。


そして、「長崎産めいち鯛と香川野菜のカルパッチョ」も白ワイン、日本酒でも楽しめる。めいち鯛は、地元の長崎でも手に入れにくい魚で、中央卸売市場からの逸品だ。


とにかく理屈抜き! まず食べて、飲んでみるべき、知られざる究極のイタリアン割烹! 平均客単価は、¥10,000前後。
 梅田から至近の福島で、今夜は、新しいお気に入りにHeijuを加えてみませんか。

■Ristorante Heiju
大阪市福島区福島3-12-5 1
電話:06-6147-2188
営業時間:18002300(ラストオーダー/2200
定休日:毎週火曜日、毎月1回水曜日(不定)
    *ご予約があれば、営業いたします。