2020年4月2日木曜日

寿光イチオシの店紹介 VOL.1 「酒肴人」

コロナウィルスの影響で、大阪の日本酒がうまい料理店が次々と営業を自粛しています。
そして、そんな状況を歯がゆく見守るしかない私に何ができるのか。
酒食ジャーナリストなのに手をこまねいていては、生涯、後悔するにちがいないのです。
だから、コロナが終息した時に、全国の日本酒ファンの皆さんが大阪で飲み食いを楽しめるすばらしいお店を、過去に私が取材した記事からご紹介していきます。
家飲みの肴に、お楽しみ頂ければ幸いです。

VOL.1 「酒肴人」

世界遺産を先駆けた、“日本のBAR”の真骨頂


 ほのかなダウンライトの中に浮かぶ、瀟洒なカウンターテーブル。枚挙にいとまがないほど並ぶ洋酒のボトルには、正統派ブリティッシュスタイルのBARやパブを感じる。しかし、店名は「北新地  酒肴人 (しゅこうじん )」と日本的な趣き。驚いたことに、関西ではめったと口にできない垂涎の日本酒もゲストを待っている。肴や料理は意表を突かれるほどユニークな和風レシピながら、ロハスに徹底して使い切る食材やダシ本来の旨味にゲストの誰もが思わず唸ってしまうだろう。“BARにして、BARにあらず”。その意外性に、筆者は近頃に世界遺産となった、クールな日本料理の魁を見た。
「私が32年前にロサンゼルスで修行した頃、現地のお客様に教えられた“本当の日本のBARの在り方”を追求し続けた形が、この酒肴人です。旨い酒と美味しい肴の相性はもちろん、器のしつらいも愛でながら日本らしい酒と食を楽しみ、語り合える店創りが私の生涯テーマです」
 そう語るのは北新地のみならず、バーテンダー界で活躍してきたオーナーの高村光有(たかむら こうゆう)さんだ。飲食のプロフェッショナルとして41年のキャリアを持ち、一流ホテルのバーテンダーを皮切りにアメリカのレストランBARでシェイカーを振り、帰国後は大阪を中心に人気のショットBARやダイニングBARなどをプロデュースし続けてきた。知る人ぞ知る、まさに食い道楽の大阪にとって宝物のような人物だが「私は、あくまで職人としての道を追い求めてきただけですよ」と謙遜する。そんな高村さんを師匠と慕うバーテンダーや親交のある料理人たちは、口を揃えて「親方」と呼ぶ。



孤高のバーテンダーから、異彩を放つ親方の道へ

さて、今では関西の酒と食の後継者も育成している重鎮の高村さん。若かりし頃からの来し方に、その腕前を納得できる。大阪のホテル時代、若輩バーテンダーながら料理にも興味があった親方は、おつまみも独学で考案。その後、芦屋のBARに勤めたが、転機の訪れは27歳の時だった。ロサンゼルスで働く友人の誘いを受けて、単身現地のレストランBAR“SHOGUN HOUSE”に、孤高のバーテンダーとして武者修行に飛び込んだ。
「まずは、ロサンゼルスの本格派バーテンダーが見当たらないことに絶句しました。とにかく酒も料理も大雑把なのです。だから、酒にうるさいイギリス人のゲストは私の創るカクテルを高く評価してくださって、近隣の町からも『本物のバーテンダーがいると聞いて来た!』と大盛況でした」
 BARの運営を一任され、高村流のオリジナルメニューを考案し、そこには日本酒やおつまみもアレンジした。これがセレブなお客様に大ヒットしたわけだが、反面、一様に声を揃えたのが『なぜ、日本にこんなBARがないの? 東京でも大阪でも、どこに行っても外国をそっくり真似したBARしかないじゃないか? 日本のBARなら日本酒を置くのは、当たり前だろ?』との詰問だった。
「まさに、目から鱗でしたね。胸に手を当てて、丁寧で繊細な仕事を誇りにする日本らしいBARとは何かを問い直す機会を頂きましたよ。そして考え悩んだ末に、肝心なのは日本国内のお客様の嗜好を変えることだと閃きました」
 アメリカの現状から察するに、このままでは自らの技の向上だけでなく、日本のBAR業界も将来はないと気づいた。一念発起して帰国した高村さんは日本酒や焼酎、梅酒も揃える、独創的かつ新進気鋭のレストランBARやカフェBARをプロデュースする。さらには“BARマンズ コミュニティ”など関西におけるカクテルコンペを独自に主宰。次代のバーテンダーの魁となって突っ走り、数々の功績と技を持つ“親方”として異彩を放っている。


 旨い! を尽くす酒の肴、その原点から生まれるロハスなメニュー。

 酒肴人 三昧人には800種の酒類、60種類を超える料理や肴のメニューがあり、毎夜、健啖家たちを満悦させている。それを創り出す食材を無駄にしないのも高村さんのモットーだ。“ロハス”をサブテーマを掲げ、例えば刺身を切り取った鰤の中落ちやアラは骨ごと炙って常連客に出したりする。日本酒ツウには、盃が止まらないつまみだ。筆者が絶賛したいのは、ダシの美味しさ! 鰹と昆布の風味は舌の奥まで余韻を引くほど素晴らしく、日本酒と相まって体の隅々まで旨味をしみわたらせる。そんなロハス嗜好を生かした逸品の一つが「ふぐ三昧」。とらふぐの“皮身”、その身側にある“とおとう身”、てっさの“ぶつ身”の三種類に白菜とあさつきを加え、ポン酢で食べる。
「隠し味に、特製のバラ揚げをふりかけています。これも海苔や海老などをきちんと始末して、揚げ玉にした物です」
 心地よい食感や旨味が、なめらかな純米吟醸や純米酒にピッタリだ。二品目の「しょうが千本」も素朴ながら、手の込んだ肴。京揚げを30分間炒り、土しょうがの千切り、じゃこ天の塩味だけで味をつける。これには、ぬる燗の熟成酒がオススメだろう。
さて、あなたも今宵は酒肴人の一人に、ぜひ、加わってみてはいかが。



・アドレス
北新地 ロハス 和彩処   酒肴人 三昧人
大阪府大阪市北区堂島1-3-16
堂島メリーセンタービル2F  電話:06-6341-5080


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