2022年3月15日火曜日

最近描いた、イラスト お気に入りの作品です。

 約20年間に描いたイラスト原画や、新規の描き起こしイラストなどをリターン品にして、クラウドファウンディングをしました。
 初めてのチャレンジなので、目標金額は20万円と低めに設定しましたが、ご支援して下さった皆様のおかげで、達成できました!!

 そんなリターン品の中から、私のお気に入りのイラストをご紹介します。

 こちらは、和歌山県の美味「クエ」です。
 獰猛な根魚のクエらしさを、表現。でも、こいつの白身は最高のごちそう!
   九州では「アラ」とも呼び、冬のアラ鍋は、日本酒と合わせれば最高の味わいです。



 そして、バイオリンのストラディバリウス。

 歴史と伝統ある名器ですね。一台、数億円の物もあります。
 演奏される方は、手が震えないんでしょうかね。


モノクロ調で、アートな感じに仕上げたのは「黒龍」。
縁起物の龍神様で、琵琶湖の竹生島に祀られています。龍の中でも最強のパワーを持っている、霊験あらたかな神様です。




2021年12月19日日曜日

北海道のシャケ漁が不漁だそうな、村上の塩引きシャケは大丈夫かな。

今年も、黒潮の北上でシャケ漁は大打撃。ほとんど近海で獲れていないそうです。
てことは、年始の荒巻シャケは、外国からの輸入ものばっかりになるってことでしょう。
私の好物は、新潟県村上市特産の「塩引きシャケ」です。
市内の三面川(みおもてがわ)を遡上するシャケで作る発酵食品で、なんと平安時代から京の天皇へ献上されていました。実際、ものすごく美味しくて、荒巻シャケとは比べ物にならないほど、甘味があります。

現在も、三面川では漁が行われ、川べりの加工工場でシャケの身と筋子に取り分けられます。ここには直売所が合って、超新鮮な身と筋子を、破格の値段でゲットできます。

また、いよぼや会館というシャケの記念館まで設立されていて、川底のシャケを観察できます。実は、村上のシャケ漁は江戸時代から藩政によって、稚魚の養殖も始められていたのです。これは世界初の養殖技術といわれています。

せめて、村上の塩引きシャケだけは、減らないで欲しいな。
正月の酒が、シャケと美味しく楽しめますように!





2021年12月17日金曜日

もうすぐ、クラウドファウンディングをスタートします!

 もうすぐ、クラウドファウンディングを始めます!

リターンは、これまでに描いたイラスト原画や、ご要望に応じて新たに描くイラストになります。


目的は、私の創作活動をさらに追求するための資金集め、そして小説を出版するためでもあります。

スタートしましたら、facebookでも告知いたします。どうぞ、ご支援をお願いいたします。

2020年6月16日火曜日

寿光イチオシの店 VOL.15 「文禄堤 茶味(ぶんろくつつみ ちゃみ)」

大阪の毎日のコロナ感染者がほぼ0になり、日常生活を取り戻そうとしています。
キタやミナミの繁華街の人出が戻るには、まだ時間がかかりそうですが、
ジモティ派は近場の名店で美食と美酒を楽しみましょう!
そんな寿光イチオシのヌーベルな割烹が、京阪電車沿線の守口市にある「文禄堤 茶味(ぶんろくつつみ ちゃみ)」さんです。
主婦の皆様にも、ランチが大好評ですよ!



歴史ロマンも薫る、カフェのような日本料理店
                                            
大阪の歴史を物語る、淀川の流れ。その南側にかつて延びていた「文禄堤」をご存じだろうか。かの豊臣秀吉が淀川の氾濫を防ぐために、文禄3年(1594年)戦国大名の毛利輝元、小早川隆景、吉川広家へ命じて建設。慶長元年(1596年)に完成し、堤防の上は大阪と京都を結ぶ最短路である京街道として、旅人の往来でにぎわった。今も往時の遺構を残す文禄堤は守口市のランドマークの一つで、風流にも店名に冠しているのが、日本料理店「文禄堤茶味(ぶんろくつつみちゃみ)」だ。こう聞けば、誰しも格式ある料亭の風情を頭に描きそうだが、思いがけず木肌を生かした建屋は山小屋風。カウンター6席、テーブル14席(4人×2卓、6人×1卓)の店内は瀟洒なカフェの雰囲気で、広い窓からの採光に木調のインテリアが映えている。




「主婦層を主とした女性のお客様に、たくさんご来店頂いてます。お料理のメニューは純日本料理のコースだけで、ランチ、ディナーともに3種類をご用意しています。敷居の高くない、親しみやすい日本料理。それでいて、一級品の味わいとしつらいが当店のテーマです」
若々しい精悍な笑顔で答えてくれたのが、オーナー兼料理長の船見拓也(ふなみ たくや)さん。文禄堤茶味をオープンして2年半を迎え、弱冠35歳ながら、地元ファンが称賛する和食の達人である。伝統的な京料理一筋に修業をした船見さんは仕入れ先との信頼関係を通じて、天然食材や国産品にこだわっている。冷凍物は一切使わず、旬の旨味や滋味を、腕によりをかけて引き出すのだ。また、彩りや美しさを演出する皿や器は味わい深い作家の品を選び、船見さんのこだわりが垣間見え、献立が進むほどにゲストは酔いしれる。ひときわ目を惹いたのは、重厚な土鍋の釜! 実は、炊き立ての土鍋ご飯がコース料理のメインディッシュと、船見さんは自慢する。さらにはコース料理の名脇役となる垂涎の日本酒も、みずから吟味する。
「常時10種類ほどを、ご用意しています。酒屋さん任せではなく、私の仕立てる料理とナイスペアになる美酒をセレクトしています」
日本料理には日本酒と、憎いセリフを口にしてくれる船見さん。その技が冴えるコース料理は、すべて税込みで、【ランチ】月 \1,800、雪 2,800、禄 \4,000 【ディナー】扇 ¥3,800、雅 ¥5,500、福 ¥7,000と、うれしくなるほどお手頃だ! 
 


建築学より料理の世界を選んだ、天性のセンスが光る!

文禄堤茶味の献立は、優雅さを演出する料亭料理とは一線を画すように、侘び寂びも感じる。
「店名にある茶味の由縁でもあるのですが、御食事のしめには抹茶を点てさせて頂きます。京懐石を基本にしながら、高尚な日本料理ではなく、身近な“晴れの日の膳”として楽しんで欲しいですね」
と船見さんはコンセプトを語る。そんな愉楽と癒しをもたらす仕立ての料理には、船見さんの来し方が隠し味となっている。小学生の頃から料理が大好きだった船見さんは、テレビの料理番組を見よう見まねで包丁を握っていた。ボーイスカウトに所属していたこともあって、キャンプでの自炊にも、そのセンスは光った。


「今でも当時の友人に会えば『いろんな手料理を作ってくれたよなぁ、うまかったよ!』と、思い出話をしてくれます」
高校生時代まで台所少年だったとはにかむ船見さんだが、進んだ大学では建築学を専攻。ところが、料理人への夢が、胸の中でくすぶり続けていた。一念発起して大学を辞し、調理師の専門学校へ入った。そして、本格的な京懐石の料理店へ入社。下積みから煮方、焼き方と修業を積み、13年目にして独立開業を成し遂げた。
「私は枚方や寝屋川に生まれ育ち、守口も好きな街。それに、ここの立地は京阪電車の守口駅へ通じ、人通りに恵まれています。ですから、店舗の建築時から『いったい、何ができるんだろう?』と地元の皆様が興味をもって下さったようです」
なるほど! 文禄堤茶味の木造りの店構えは、建築を学んでいた船見さんならではの設計にちがいない。そんな異彩を放つセンスが、ひと味ちがう日本料理に生きている気がした。



 目にも舌にも優しい、料理と日本酒の旨味に酔いしれる。

文禄堤茶味は、日本料理のコースがモットー。その中から、船見さんの技とセンスが光る二品をご紹介しよう。まずは、「前菜の盛り合わせ」。京懐石らしい上品な食材の仕立てに、器の彩りやしつらいの美しさも魅力的だ!大吟醸や純米大吟醸など、すっきりとした口当たりの淡麗な酒で膳を始めたい。


そして「お造りの盛り合わせ」は国産の天然物にこだわり、コースごとに4種類以上の旬の魚介類を仕立ててくれる。その日の入荷によって種類は変わるが、合わせる日本酒を船見さんにセレクトしてもらってはいかがだろう。忘れてはならない、土鍋ご飯としめの抹茶も絶品だ。


下町の風情を漂わせる京阪電車守口市駅から、ほど近い場所に佇む瀟洒な日本料理店。今宵は肩肘を張らず、ほっこりと気軽に親しめる文禄堤茶味で、船見さんの心づくしの日本料理を味わってみませんか。


■文禄堤茶味(ご予約を、おすすめします) https://chami.osaka/
大阪府守口市本町2-4-19
電話:.06-6991-3830
営業時間:(昼)
前半:11時半〜13
後半:1315分〜1445
*月コース(1800)は、2部制とさせていただいております。
(夜)18時~22
*夜は完全予約制。15時までにご連絡いただければ、当日のご予約を承れます。現在、「扇」3800円のみ、予約なしでも対応をしております。

定休日: 日曜日・第2・第4月曜日

2020年6月4日木曜日

寿光イチオシの店 VOL.14 「Ristorante Heiju」

春から初夏の旬の食材を実感する、ようやく気持ちの余裕が出てきたコロナ解除。
ランチとちょい飲みを兼ねた、イタリアンで日本酒!
そんなオシャレな日本酒タイムを楽しみたくなる絶品リストランテ、大阪市福島区の「Ristorante Heiju(ヘイジュ)」を紹介します。



至高のペアリングで魅了する、オンリーワンのイタリアン割烹。


誰にも教えたくない、とっておきの料理店。筆者が、この言葉を実感するイタリアン割烹をご紹介しよう。
場所は、梅田からひと駅の福島。ここ数年、天満と並ぶグルメスポットとして脚光を浴びているが、今回訪れたRistorante Heiju(リストランテ ヘイジュウ)がある界隈は、思いのほか閑散としている。下町の風情を残す通りに、瀟洒な雰囲気のHeijuの玄関を見落としてしまいそうだ。20146月にオープンし、グルメの口コミによれば「繊細すぎるほどの料理と酒のセレクトに、サプライズ必至!」と噂のHeijuは、完全予約制。若々しいオーナー兼シェフの吉野平十(よしの へいじゅう)さんの口から、驚きの言葉が飛び出す。


「当店は、料理も酒もメニューを用意しておりません。2つのコース(¥7,000と¥10,000/いずれも税・サ込み)のみですが、一人として同じ料理をお出ししない主義です。お酒は、100種類ほどストックしているワインの中、私がセレクトしてお楽しみ頂きます。日本酒は、一銘柄のみです。Heijuのコンセプトは、料理と酒のペアリングにあります」
はにかむような笑顔の端に、自信のほどが見え隠れする。料理のレシピは、その日の食材の仕入れによっても変わり、直前まで決めない。いつでも吉野さんの腕前と舌にかなう最高の食材を用意し、その旨味を生かした究極の美味しさを、千変万化に演出するためである。とりわけ魚介類にこだわる吉野さんみずから「イタリアン割烹」と呼ぶHeijuのゲストは、リピーターが多い。食通のゲストの舌と好みを吉野さんはつぶさに考え、毎回、趣向を凝らしたレシピで、もてなしているのだ。食材の目利きには、かつて大阪市中央卸売市場の鮮魚店で働いた経験が物を言う。


「イタリアンの店やホテルで修業しながら、中央市場で屈指の鮮魚店を掛け持ちして働き、自分の店を持つ夢に向かっていました。今も、その鮮魚店から食材を仕入れていますよ」
吉野さんが固いきずなを結ぶ鮮魚店からは、数少ない旬の魚や海産物が届き、その希少価値にも、Heijuに惚れ込む健啖家は舌鼓を打つ。日々、至高のイタリアン割烹を探求している吉野さんだから、さぞかし食べ歩く機会もあるはずと訊ねれば、意外な答えが返された。
「私、料理人仲間が少ないんです。まずは、自分が師匠と仰ぐ方とお付き合いさせて頂く主義。だから、Heijuに同業者のお客様はいらっしゃいませんし、グルメ雑誌などにも紹介されたことがありません(笑)」

 料理学校を卒業して、Heijuをオープンするまで、ひたすら自分を鍛えながら、脇目も降らず、着実に目標を達成してきたと語る吉野さんだけに、孤独な時も長かったはず。興味津々な吉野さんのプロフィールは後述するとして、筆者は、ありきたりな食雑誌やwebに、Heijuを紹介して欲しくはない。吉野さんの食と酒のペアリングをこの雑誌読者も一度体験すれば、納得するにちがいない。


勤勉努力と食育に支えられた、孤高のプロデューサー。

28歳でHeijuをオープンした吉野さんは、その繊細な料理と同様、30歳までには自分の店を持つ夢に向かって緻密な計画・設計を描いてきた。大阪の調理師学校を卒業後、数軒のイタリア料理店、一流ホテルの厨房で洋食修業を重ねながら、中央卸売市場の鮮魚店で早朝から働いた。寝る間を惜しむ努力を積み、個性あふれるイタリアンを追求。さらには、ワインに精通するため、北新地のワインバーに勤め、ソムリエの資格を取得している。着実に、スピーディーに歩む吉野さんの勤勉さが顕す才能に師匠たちは目をかけたが、同僚や先輩の一部は反目して、嫌われたり、妬みも買ったと振り返る。


「それでも、自分は常に最低のレベルで、上を目指すポジションが私の流儀なんです。『お前の作る料理は、本当に美味しいよ』と、いつもお客様の喜ぶ声が聞きたい。そのためには、自分の生きざまを曲げません」
 確固たる吉野さんの流儀には、少年時代の菓子作りと食通な父親の影響もあるようだ。母親の作るクッキーを真似して作り、友人たちへふるまったところ「超うまい!」と太鼓判を押された。百貨店のグルメ催事などの設営を仕事にしていた父親は、全国の美味を知り尽くし、魚介類は獲れ立て自慢の魚屋でしか買わず、家庭のおかずに本物の食材しか口にしなかった。いわば、“食育”に恵まれた家庭に育った吉野さんだからこそ、Heijuが生まれたと言っても、過言ではない。



「また来たい!」と言わしめる、感動と口福のメニュー。

さて、Heijuのコースから2品を紹介しよう。さりながら、その日、そのゲストごとに吉野さんが考え出す口福のメニューは、この限りではない。まずは「北海道産うにと黒丹波枝豆 フルーツトマトジュレを添えて」。甘味たっぷりな北海道の砂川産フルーツトマトの果汁をしぼり、ジュレに仕上げている。うにの甘味、丹波枝豆の風味が、白ワインに合いそうだ。日本酒は、山田錦の吟醸タイプがふさわしい。


そして、「長崎産めいち鯛と香川野菜のカルパッチョ」も白ワイン、日本酒でも楽しめる。めいち鯛は、地元の長崎でも手に入れにくい魚で、中央卸売市場からの逸品だ。


とにかく理屈抜き! まず食べて、飲んでみるべき、知られざる究極のイタリアン割烹! 平均客単価は、¥10,000前後。
 梅田から至近の福島で、今夜は、新しいお気に入りにHeijuを加えてみませんか。

■Ristorante Heiju
大阪市福島区福島3-12-5 1
電話:06-6147-2188
営業時間:18002300(ラストオーダー/2200
定休日:毎週火曜日、毎月1回水曜日(不定)
    *ご予約があれば、営業いたします。

2020年5月28日木曜日

寿光イチオシの店 VOL.13 「やきとり 鳥源」

関西は、ようやく平常モードに戻りつつあります。
短い時間ながら、仕事帰りや休日の宵酒を楽しむ、至福の一杯が欲しくなってきました。
兵庫県伊丹市にある、こだわりの鳥料理店「鳥源」さんは、まさにピッタリ!
極上の焼き鳥と選りすぐった日本酒を、瀟洒な店内で、ゆるりと楽しめますよ。



「静謐&和モダンにくつろぐ、大人の焼鳥店」

古くから閑静な住宅街である、兵庫県伊丹市。近頃は周辺の再開発によって若い世代の住民も増え、トレンドな駅前店も立ち並んでいる。中でも、20176月にオープンした「やきとり 鳥源(とりげん)」は、ひときわ異彩を放つ存在。阪急電車伊丹駅から歩いて数分のマンションの1階、粋な料亭かと見まがう一面群青色の壁が美しい店構え。かつて筆者が訪れた北陸・金沢の御茶屋を髣髴とさせる色合いで、美しい青には高貴なゲストを迎える意図を感じる。


玄関脇は地元・伊丹で醸される銘酒の菰樽が積まれ、ゲストの垂涎をそそる。しかし、一歩店内に入れば、イタリアンバルかシックなBARのような雰囲気。ほのかなダウンライトに浮かぶ14席の白木のカウンターの向こうにはギャルソン風のスタッフが佇む。4席×26席×1のテーブル席もゆったりとくつろげ、そこかしこに並ぶシャンパンやワインのボトルが、おしゃれなジャズBGMにふさわしい。

「私がこだわる極上の焼鳥だけでなく、時間と空間、器やおもてなしまで、ちょっと贅沢に味わって頂くのが当店のコンセプトです。銀座や北新地にも似たような志向の店が増えましたが、当店の自慢は、伊丹市で50年の実績を持つ鶏肉専門卸会社である私の実家がこだわる上質のブランド“丹波地鶏”や“但馬すこやかどり”です。旨味と脂ののったこの鳥肉には、日本酒だけでなく、シャンパンやワインもベストマッチしますよ」
 若々しいイケメンな笑顔と、逞しく引き締まった体格で答えてくれたのが、鳥源のオーナー・松本 雄宗(まつもと たけむね)さんだ。弱冠29歳のナイスガイで、聞けば、学生時代はアメリカンフットボールの選手として活躍していた。若々しい松本さんのセレブな焼鳥嗜好は、ミドルエイジのお客様を中心に静かな人気を呼んび、夫婦や家族連れの姿も増えている。



「当店では串焼きを1本ずつお出しする、付き出し、小鉢、スープなどを含めたコース料理が基本です。3つの定番(5串コース/¥1,8007串コース/¥2,30010串コース/2,500 *すべて税別)と、7串コースにサラダや特製の鳥源ラーメン、デザートが付くフルコース(¥4,500/税別)もおすすめです」
 単品での焼鳥もあるが、コースの追加注文のみ。焼鳥は味のたんぱくな串から、しっかりと脂ののった串へ進みながら、それに合う酒をお勧めもしますと松本さん。箸休めには酒の肴になる一品料理20種も楽しめるが、さて、アルコールのラインナップはいかがと冷蔵ケースを拝見してみた。


「日本酒は伊丹の地酒3銘柄のほかに、人気の吟醸酒も57種。ワインは11種類、シャンパン5種類、焼酎も10種ほどご用意しています」
 いわゆるオヤジ系の焼鳥屋と一線を画すおしゃれな鳥源は、ワイングラスで日本酒を提供している。さらに焼鳥の器はアートな趣きで、逸品の鳥料理を引き立てる。ただ、古めかしい印象の「鳥源」の店名だけは、実家の鳥肉卸会社にちなんでいると松本さんは胸を張る。では、その由来も含め、松本さんのプロフィールを訊いてみよう。



夢はアメリカでの成功、「クールな焼鳥」を世界へ!

大学を卒業後、大手の発酵化学食品会社に勤めていた松本さんは、脱サラをして西宮市にある焼鳥の超繁盛店で、炭火のいこし方など、一から修業を積んだ。
「大企業のルーティンな営業マンの仕事が、自分には向いてないと感じていました。やっぱり代々商売人の家系ですから、血が騒いだのでしょうね」
 照れ笑いする松本さんだが、個性的な鳥源からすれば筆者は正解だったと拍手を送りたい。ただ、実家が鶏肉卸の老舗だけに、焼鳥店を起業したのは、ある意味、常道のように見える。しかし話を聴けば、鳥源のセレブ志向の原点は、子どもの頃から一級品やカッコよさにこだわる松本さんのセンスと、かつてアメリカで体験したチャレンジスピリッツにあるようだ。


「元来、私はカッコいいライフスタイルに憧れがあって、
焼鳥も海外でそんなビジネスモデルにできると思っていました。鳥源を日本一の焼鳥店にすることが目的ではなく、焼鳥という日本の食文化を世界中に広めてみたいですね。そんな夢を持つ姿勢は、大学時代に留学したオレゴン州での暮らしから身に付きました」
 大らかなオレゴン州で知り合った誰もが、それぞれに、自分だけのアメリカンドリームを追い求めていたと回想する松本さん。その余韻は松本さんの胸から消えることなく、クールに響いていた。ようやく夢への第一歩としてスタートさせた鳥源で、焼鳥ではなく「鳥源に行きたい!」と指名するゲストこそ、自分の理想だと熱く語る。
「きっと、伊丹市で半世紀前に鳥肉卸の商いを創業した祖父・砂田 源治郎(すなだ げんじろう)も喜んでくれると思って、店名に、彼の名前から“源”をもらいました」
 和と洋をコラボする“焼鳥モダニズム”だけでなく、先祖から受け継ぐ“不易流行”を大事にする松本さんの心に、筆者は感服しきりである。


鮮度と旨味の競演! ワイングラスの日本酒が躍る!

鳥肉は色とツヤを見れば、美味しさのちがいが分かると筆者はこれまでの取材経験で実感している。鳥源では、まさに、それを堪能するメニューがまず登場! 松本さんイチオシの「ささみ昆布じめ(¥700/税別)はコースメニューにも含まれ、ハーブで育てた但馬すこやどりを使用。極上で肉厚な60gのささみを日本酒と昆布で一日じっくり寝かせることで、さらに旨味を引き出している。これには、キレのいい辛口タイプの純米吟醸が合いそうだ。


そして、メインディッシュの串焼きの鳥! ささみや砂ずり、レバーほか、おすすめの部位が注文本数によって、1本ずつ供される。(写真は、撮影用のため5本盛り) 脂ののった地鶏は、日本酒だけでなく赤ワインとも楽しんでみたい。平均客単価は、¥5,000~¥6,000とお手頃価格。シャンパン好きの女性をエスコートすれば、必ず満足するにちがいない!


さて、今夜はひと足、伊丹まで足を伸ばして、贅沢な大人の焼鳥を「鳥源」でいかが。

■やきとり 鳥源(ご予約を、おすすめします)
兵庫県伊丹市西台3丁目1-20
電話:. 072-768-9877
営業時間:17:0023:00
定休日:日曜日・祝日




2020年5月21日木曜日

寿光イチオシの店 VOL.12 「粋魚 むらばやし」

5月21日、本日ようやく関西の緊急事態宣言が解除されます。
満を持して、美味しい日本酒と料理を楽しみたい! と勇んでいる方も多いでしょう。
でも、まだまだ油断しないでくださいね。
深酒や長時間の外出はせず、旬の魚介類と美酒を、ちょうどよい腹八分目で舌鼓。
そんな極上な北新地「粋魚 むらばやし」をご紹介します。


       魚、酒、米の三位一体で唸らせる、凛たる魚割烹。

ぬくもりと艶を帯びた伽羅色のカウンター席に座れば、にわかに大きな氷を砕き始める料理長・村林英和(むらばやし ひでかず)さんの姿に、誰しも圧倒されるだろう。そして、侘び寂びた風合いの鉢に、カチ割られた氷が刺身の舞台をしつらえていく。一片の笹の葉が名脇役となって、主役であるみごとな切り身が、しなやかな手に盛りつけられる。あたかもそれは、能の舞いのような趣きをも客席に供する。



いわゆる贅を尽くした日本料理とは一線を画した、素朴な美意識。それも粋魚むらばやしの美味しさの魅力なのだ。
「うちは魚本来の美味しさにこだわっていますから、余計なことはしません。煮付けも醤油だけの味つけで、極めて素直です」
魚料理の匠として北新地でも一頭地を抜く存在の村林さんの言葉に、粋魚むらばやしの大ファンである筆者は二の句もなく頷いてしまう。ひたすらに、魚がうまいのである。「魚の本当の美味しさとは、こういうものなのか!」と、舌の先から五臓六腑までがバンザイをして喜んでしまう。そんな村林さんの選ぶ魚は鮮度が命だ。和歌山沖の朝獲れの魚介類を主にして、兵庫の明石や淡路の地物にもこだわる。例えば真鯛や平目、クエと聞けば、日本酒党には垂涎の的だ。北新地では一番分厚いだろうと噂されるこの店の刺身を醤油にひたし、口へと運ぶ。ひと口噛めば、濃醇な旨味の波紋が広がり、その余韻に耽りつつ村林さんが取り揃える美酒を口に含む。魚介料理の旨味に寄り添う10種類の酒は、辛口でありながらも清楚な旨味をまとった淡麗なセレクトが中心。そんな日本酒たちが、粋魚むらばやしの料理をさらに引き立てている。


 ところで、粋魚むらばやしのオ・モ・テ・ナ・シを、もう一つご紹介しよう。それは土鍋で炊き上げる、究極のごはんである。村林さんいわく「やさしい、ごはん」なのだが、この土鍋ごはんを食べたいがため、粋魚むらばやしに行列する常連客は枚挙にいとまがない。その秘訣にも、村林さんのこだわりが隠されていた。
「まずは土鍋ですが、信楽焼の名工に行脚して、7回作り直してもらった特注品です。米の炊きかげんが抜群にいいですよ。水は和歌山の高野山系の天然水で、米そのものは富山県産のコシヒカリ。立山連峰の山の沢水で育った逸品です」

 なるほど! 無垢な魚と酒と米の三位一体は村林さんの凛たる料理人魂の現れと言っても、過言ではないだろう。

         
              村林流“秘すれば花”を感じる、匠の心構え。

さて料理だけでなく、幽玄をまとう粋魚むらばやしの器のしつらえに、筆者は村林さんの人となりを探ってみた。開店5年目を迎えた村林さんは49歳、料理人として30年のキャリアを持つ。実家が三代続く仕出し割烹店と聞き、その血筋もあってさぞかし順風満帆の道を歩んだと思いきや、予想だにしない答えが返ってきた。


「若い頃の私は人よりも器用でしたから、少し天狗になってましてね。高知での漁師料理の修行を皮切りに、東京・銀座の高級な天麩羅店や京料理店などで腕を磨きました。しかし、有頂天になっていた私に大きな転機が訪れたんです」と苦笑いする村林さん。実は三十歳を迎えた頃、島根の郷土料理店へ入ると、その料理長と運命の出逢いが待っていた。
「お前のやってるのは、料理じゃない」
 料理長からプライドを一蹴された村林さんは、包丁まで取り上げられ、半年間、坊主見習い同然の仕打ちを受けた。しかし、今思うにそれは屈辱よりも、己の料理人としての器を見つめ直すターニングポイントだったと村林さんは語る。
「魚をさばくのにも、ちゃんと意味があるのです。誰のために、どんな目的のために、どうさばくのか。魚をさばくことは単なる所作でなく、料理に向かう心づくしだということを、その師匠に教わりました」


 確かに、刺身から煮魚や酒肴へと食べ進む筆者の心にも、その意志は伝わってくるようだ。粋魚むらばやしの献立の流れには、序・破・急さえも感じる。まるで世阿弥の“秘すれば花”が、村林流の原点のようでもあった。


           煮魚のダシで食べる、究極のシンプル イズ ベスト。


さて、それでは粋魚むらばやしのこだわり、和歌山沖のキトキト魚の刺身を頂こう。厚さ3cmもあろうかという真鯛やイサキに肉厚なあおりイカ、そして今まで岩場にいたようなサザエが登場! 魚は上質の和歌山醤油で頂くと、噛みごたえの弾力以上に甘いほどの旨味が、ギュッとしみ出してくる。サザエは、鼻腔を満たす磯の香りがたまらない! その堪能の瞬間を逃さずに美味しい日本酒を流し込めば、五感をゆさぶる口福が押し寄せてくる。季節の旬によって村林さんが目利きした絶品の刺身が登場するのだから、食い道楽には見逃せないのだ。


 そして、土鍋ごはんである。炊きたての土鍋を開けたとたん、きっと貴方はピカピカの米粒とその湯気の香りに声を失ってしまうはず。それほど、この特製土鍋で炊いたごはんは逸品なのだ。
「まずは、ごはんそのものの旨味を味わってみてください。次は添えてある黄金色の生卵をかけて、どうぞ。そして、煮魚のダシをかけても召し上がれます」
筆者は、土瓶に入った煮魚のダシをおもむろにかけてみた。つまり最高の魚の旨味を引き出した醤油ダシを、最高のごはんにかけて食べるという、究極のかけごはん! まさに、村林さんらしいシンプル イズ ベストだ。


締めくくりには、土鍋のオコゲごはんを塩だけで食べる。するとどうだろう、その懐かしい美味しさの向こうに浮かんだのは、少年時代のおふくろの姿だった。肩肘張らず居心地の良い粋魚むらばやしには、家庭的な愛も隠し味になっている気がした。そんな一流一途な魚割烹へ、今宵はいかが。

■粋魚 むらばやし https://kd7e000.gorp.jp/
大阪市北区堂島1217 大日ビルB1F
電話:0663443909
営業時間:17302300(ラストオーダー2230
定休日:日曜日、祝祭日

2020年5月14日木曜日

寿光イチオシの店 VOL.11 「和酒 炭火 つたや」

ようやくコロナ自粛がほどけてきそうで、関西の地場の美味しい店にも行きたくなって、ウズウズしている私です。
そんなジモティごころをそそる、ちょっと繁華街を外れた、いいお店も、コロナ明けには行ってください!
今回は、兵庫県尼崎市に近い立花駅前の、鳥料理が絶品の「和酒 炭火 つたや」さんです。お値段も、とっても美味しいでっせ!



      「開店1年にして常連客が通い詰める、鳥と酒の人気店」

尼崎市のJR立花駅前は、庶民の行き交うショッピングモールや新興マンションで俄かに活気づいている。その一画・フェスタ立花南館で、オープン1年目にして人気店となっているのが「和酒 炭火 つたや」だ。


真新しい格子戸の脇には新酒の目印である酒林が吊るされ、日本酒ファンの目を引く。上品な敷居の高い店かと思いきや、明るい店内はカウンター11席だけの庶民派。炭火を使う料理のメインは焼き鳥で、鳥取県産の大山鶏(だいせんどり)など12種類の串焼きや日替わりの肴8種。さらには骨付きラム、レバーパテといった一品など、約35種類のメニューに毎夜、日本酒ファンが舌つづみを打っている。

「立花という土地柄、価格はリーズナブルですが、うちは気風のいいお客様が多く、日本酒をよく召し上がりますよ。7:3の割合で、日本酒派が多いです。鳥料理に合う冷酒やお燗酒に向く銘柄を、常時10種類ご用意しています。お客様の平均単価は¥3,500前後とお手頃です」


丁寧に下ごしらえの串打ちをしながら、オーナー兼料理長の畑中昭範(はたなか あきのり)さんは答える。弱冠36歳ながら、串焼きこそが自分の舞台だと語る畑中さん。実は、さまざまな料理修行を経てきた逸材である。特に筆者が驚いたのは、かつて世界一周をする豪華客船の厨房で働いたこと。火力よりも蒸気を使って料理する厨房、何ヵ月もの間を海上で暮らす生活は、畑中さんにとって興味津々の世界だった。また、料理の腕前のみならず日本酒にも精通し、冬場には蔵元を巡る酒匠でもある。
「人気のブランド酒じゃなく、自分の舌で味わい、選ぶことがモットーです。私の料理も同じですが、造り手の顔が見える酒を選ぶ大切さを、先輩酒匠の方たちに教えてもらいました」
旨味と脂がタップリのった大山地鶏には生の刺身や焼き物もあるが、それぞれの美味しさとマッチする日本酒の甘辛、酸味も畑中さんには欠かせない条件なのだ。


        船上の料理人が一念発起した、串焼き料理の魅力!

意外にも、畑中さんの出身は北海道函館市。幼い頃から料理人を目指したのには、函館生まれならではの理由があった。
「私の実家は料理店で、祖母と伯父が函館市場のカニやホタテなどの専門店を営んでいます。美味しい魚介類に囲まれて育ったことが要因でしょうね」
高校生の畑中さんが目指したのは、日本屈指の大阪にある調理師専門学校。北海道なら東京へ行くほうが近かったのでは? と筆者が訊けば、どうしてもその学校へ入りたかったのと、関西弁の彼女が欲しかったと笑う。そして卒業を前にした年、学校の就職紹介で目にした豪華客船“ぱしふぃっく びいなす号”の求人情報へ釘付けになった。


「好きな料理の修行ができて、世界中を旅行できるし、船員ですから、陸上よりも給料や待遇がいい。見逃す手はないと思って、飛びつきました」
 しかし、ぱしふぃっく びいなす号は最大660名の旅客を乗せるスケール。限られた船内スペースを使った、20名ほどの厨房はまさに戦場である。畑中さんの仕事は和食だけでなく、フレンチ、イタリアン、中華からスウィーツに至り、25歳で下船するまでの7年間、八面六臂の修行を重ねた。慣れない船上生活に疲れると、医務室へ通った。そこで出逢ったのが、当時、船内の看護師を担当していた奥様だったと、はにかむ畑中さん。
「妻と一緒に、陸へ上がることを決めました。その後、和食店や居酒屋チェーン店でマネージメントの勉強をし、経営と料理の両輪を持てたことが独立へのきっかけでした」
 さまざまな料理業態を知る中、ついに将来の夢を開眼したのは、日本酒と串焼きが好評な焼きトンの店だったと畑中さんは振り返る。そのスタイルが、つたやに生かされている。



        口コミで広がる焼き鳥と日本酒、そして人柄の味わい!

 さて、つたやの看板メニューをご紹介しよう! まずは、誰もが絶賛する「とり刺し 盛り合わせ(¥780/税別)」だ。新鮮な大山鶏からさばいた肝、ささみ、ずり、心臓をワサビと生姜醤油の2種類で味わう。旨味と歯ごたえに、思わず冷酒が進んでしまうだろう。上質な大山鶏の刺身には、香りのおだやかな純米吟醸が合いそうだ。


そして、熱燗派にイチオシしたいのがじっくりと煮込んだ「とりもつ煮込み(¥380/税別)」。甘辛くてコクのある味付けは畑中さんオリジナルの味噌味で、信州味噌に八丁味噌、さらに酒粕も隠し味に加えている。純米酒の燗と楽しみたい、ツウの肴だ。


筆者がオススメしたいのは、まずは畑中さんに大山鶏の刺身と焼き物のセレクトをお任せし、それぞれに合う日本酒もアレンジしてもらうこと。そんなアテンドの美味しさも、畑中さんの人柄である。きっと、リーズナブルかつ至福なつたやタイムとなるにちがいない。ちなみに、日本酒だけでなく、焼酎12種類のほか、ビール、ソフトドリンクも充実している。
つたやに至近なJR立花駅は、大阪駅からなら15分。客席は11席だけに、まずは電話予約がグッド! さて、今夜はひと足伸ばして、立花へいかがでしょう。

兵庫県尼崎市七松町1-3-1 フェスタ立花南館141 
電話:06-6430-9411
営業時間: 17002400
定休日: 日曜日

2020年5月9日土曜日

寿光イチオシの店 VOL.10 「美食屋 こころ」

大阪府知事と大阪府民のがんばりで、ようやく自粛緩和のきざしが見えてきました。
晴れて普段の生活に戻ったら、行ってみたい、うまい店!
そんな情報を発信している「寿光イチオシの店」、今回は、京阪電車沿線の萱島にある
アットホームな賑わいが自慢の「美食屋 こころ」さんです!
女将さんの手料理は、垂涎の大皿メニューぞろいですよ~。現在、テイクアウトのランチ&オードブルも展開中です!


       アイデア料理とおふくろの味に和む、下町の美食屋。


寝屋川市の京阪電車・萱島駅前には昭和の面影を映す商店がそこかしこに覗き、訪れた人はほっと懐かしい気分に浸ってしまう。そんなレトロな通りの一画に佇む「美食屋こころ」は地元を始め大阪市内のグルメにも一目置かれる、11年目を迎えた美食の居酒屋だ。しかも、下町だけにお客様の平均単価は、¥3,000前後とリーズナブル!


「うちのモットーは、大皿の創作料理や家庭的な惣菜で、お客様にほっこりしてもらえるところ。とりわけ、地元の河内野菜や浪速の食材にこだわりながら、懐かしいおふくろの味も楽しんでもらえますよ」
 ふくよかな笑顔でゲストを迎えてくれるのが、女将の松本博子(まつもと ひろこ)さんだ。庶民的なムードながら、美食屋こころのしつらえは、萱島ではひと味ちがう洗練された店構えだ。白木が美しいカウンターの上には、松本さん自慢の大皿料理が並ぶ。季節の旬をふんだんに使った料理はそのボリュームだけでなく、目にも鮮やかな彩りが一気に食欲をそそってくる。小鉢物などを含めるとメニューは80種類もあり、すべて松本さんのオリジナルというから脱帽だ! むろん、料理を生かす酒のセレクトにも余念がない。全国のうまい日本酒を知るうちに、それなら寝屋川や門真といった河内らしい日本酒をと、地元の有志とともに「かどま酒」なる地酒を造り出したのである。


「かどま酒は山田錦で造りますが、兵庫県産じゃなくて、地元・門真市の田んぼで栽培しています。それを河内の酒蔵さんで仕込んでいますから、まさに地酒でしょ」

パワフルな女将だからこそ、アルバイトの学生さんとたった二人で繁盛店をこなせていると常連客は口を揃える。その秘訣を、筆者は松本さんのプロフィールに得心した。


        八面六臂の肝っ玉ねえちゃんは、炉端焼き店の血筋

 萱島生まれの萱島育ち、生粋の河内っ子の松本さんは炉端料理店の娘として育った。そんな下町っ子気質と地元愛から、今では寝屋市と門真市の若い料理店オーナーで構成する「飲食店元気塾」を発足。かどま元気バルなどの料理イベントや地元産のかどまレンコンを盛り立てるなど、元気塾メンバーを牽引する肝っ玉ねえちゃんとして八面六臂に活躍している。


「物心ついた頃から、両親は夜遅くまで店を切り盛りしてました。だから、自分の食事は自分で作り、中学になると両親の店を手伝ってもいましたから、知らない間に料理のコツを覚えていたんでしょうね」
 日替わりの大皿料理や季節のメニューの発想は、思い立ったらすぐに手がける。レシピ本など参考にせずとも、少女の頃からの料理の経験と勘が自然に菜箸を動かした。
それでみごとな美食を作るのだから、炉端店の血筋はあなどれない。
「頑固だった父の背中を見ていたせいか、仕入れはすべて自分で目利きしています。馴染みの魚屋さんは父の代からのお付き合いですから、信頼できる上物が入りますよ」
料理一筋だった亡き父親の見様見真似でやってきた松本さんだが、ご主人も早逝し、女手一つで娘さんを育てながらこの店を続けてきた。その後ろ盾には、炉端焼き店を営んだ両親の理解と応援があった。そして愛娘にも、ちがった形でその血は受け継がれているようだと松本さんははにかむ。


「器好きの私の影響でしょうか、高校生の娘が陶芸にハマっています。うちの常連様にも陶器が好きな方がいらして、娘の器も飾ったり、使ったりしています。なんとなく照れくさいのですが、皆さん、味があるねとおっしゃってくれます」
母の手料理を、娘が手作りした器に盛り付ける。ほほえましいしつらえの中に、松本家の強い絆が見え隠れする。いつか娘さんの焼いた器が、美食屋こころの棚いっぱいに揃うだろう。その酒器には、地元のかどま酒がきっと似合うはずだ。


       ひと捻りする工夫と味わいに、日本酒ツウも絶賛!

美食屋こころでは、カウンター席に座りたい! それは大皿料理を前にして、至福の一杯が楽しめるからだ。 さっそく筆者が垂涎したのが、色とりどりの「秋鮭と秋野菜のソテー」。お腹にやさしいゴボウやレンコンの滋味に、脂の乗った鮭の旨味が絶妙に合わさっている。そのまま一気食いと思いきや、松本さんのひと工夫がこぼれ出る。
「これにチーズをのせて、グラタン風に焼き上げるんです。乳製品は、日本酒に合いますからね」
 とたっぷりチーズを振りかける松本さん。アツアツにとろけたチーズが秋野菜と秋鮭を包み込む、ひと手間かけたアイデアレシピだ! しかも、ぬる燗の純米酒とは最高の相性となった。



 一方で、家庭の味の代表格「焼きサンマ」も絶品! 何の変哲もないサンマのようだが、その新鮮さは、松本さんが目の光と身のツヤで見分けた一級品だ。長年の仕入先がイチオシする魚介類だからこそ、こちらは食材の美味しさをそのまま生かせるシンプルな塩味。徳島名産のすだちを添えて、脂のしたたる大サンマをガッツリと楽しめる。これは辛口の本醸造にピッタリだろう。


美食屋こころのお酒は、日本酒7種、焼酎5種のほかワインや果実酒などを揃えている。
晩秋の黄昏に誘われ、ぜひ、昭和レトロな萱島へ。美食屋こころで、ほっこりと和んでみませんか。

■美食屋こころ
大阪府寝屋川市下神田町33-35 
電話:072(801)0408
営業時間:18002400(ラストオーダー 2230
定休日:毎週月曜日


    

2020年5月3日日曜日

寿光イチオシのうまい店 VOL.9 「出雲そば 炭火やきとり とびた 新町店」

島根県知事のGW期間中の来県自粛コメントが、斟酌の気遣いにあふれているとSNSで高評価されています。
なるほど、神出ずる出雲の国ですし、不昧公のような文化知見にあふれるお殿様が育んだお国柄でしょうね。
そんな島根県の美味と美酒をふんだんに味わえる、大阪の人気店が「出雲そば 炭火やきとり とびた」です。今回は 新町店をご紹介! 出雲蕎麦はもちろん、日本海や宍道湖の珍味も! コロナが収束したら、ぜひ、ご来店をお願いいたします。


        VOL.9 「出雲そば 炭火やきとり とびた 新町店」

         “まるごと出雲”を満喫する、地産地消の美酒どころ。

大阪市のど真ん中、新町界隈は江戸時代から昭和の頃まで、長きにわたってなにわの商売を牽引する老舗街だった。時代は変わり、今は、こぢんまりとしたカフェやブティック、居酒屋がひしめき、若いオーナーたちが個性で勝負するエリア。今回の取材店「出雲そば 炭火やきとり とびた 新町店」も、珍しい出雲づくしの料理と地酒が人気を呼んでいる。開放的でシンプルな店構えの店内は、テーブル20席、カウンター4席。壁に貼られた島根県の観光PRポスターだけでなく、30種類ほどの地酒ラベルには、筆者のみならず、ゲストの誰もが見惚れるにちがいない。



「島根産の食材と地酒へのこだわりが、当店のテーマ。宍道湖や日本海の肴、そして、自家製の出雲そばがビジネスマンのお客様に好評です。鳥料理は、旨味と食感がすばらしい山陰産の大山地鶏を使っています」
若々しい容姿で語ってくれたのが、オーナーの飛田明応(とびた あきまさ)さん。10年前に30歳で大阪市内の谷町6丁目に本店を開業。ここ新町店は2店舗目という起業家 兼 料理人で、鳥料理40種類、一品40種類、そばは温冷含めて20種類と豊富だ! すると、インタヴューする脇から店長の前川泰司(まえかわ たいじ)さんが、タイミングよく朱色の丸いわっぱを重ねた出雲名物の“割子そば”を出してくれた。
「この割子そばの麺は、飛田社長のお父さんが手造りしています。社長の実家は、松江市で老舗の製麺店だったんですよ」
我がことのように自慢する前川店長に、はにかみながら飛田社長が頷く。息の合った二人に信頼関係を感じながら、肩肘張らず寛げる「出雲そば 炭火やきとり とびた」の人気を垣間見た。聞けば、二人とも松江市の出身。しかも幼なじみの同級生で、郷里から同じ大阪の大学へ進学した間柄である。そんな二人の素性を知ってか、ゲストには島根県出身者も多く、とりわけ地酒のセレクトは前川店長の役割。



「銘柄は、島根県の純米酒が中心です。冷酒向けの淡麗辛口をメインに2730種類、ご要望があるので無濾過生原酒も数種類を用意しています。大阪では手に入りにくい銘柄は蔵元さんから直接、入手していますよ」
 前川店長いわく、それぞれの地酒を料理メニューとペアリングして召し上がって頂くのも、島根の食と酒をイチオシする“地産地消“が看板の「出雲そば 炭火やきとり とびた」の魅力だ。余談ながら筆者は、飛田社長の名刺に、もう一店舗「出雲そば マルト」の名前を見つけた。これは? と訊ねれば、そば造りの職人である父親を大阪へ呼び、中央区島町で始めた出雲そば専門店と答える。
「私の実家は、昭和2年(1927)に創業した製麺店でしたが、残念ながら平成22年(2010)に3代目の父が閉めました。私は1軒目のとびた谷町店に、出雲から父の造るそばを仕入れていたので、大阪でそば造りの腕をもう一度、生かしてもらおうと思ったのです」
親孝行な美談! 思わず筆者の聞き込みに熱が入り出した。


        故郷の島根に錦を飾る夢を、父と親友とともに!

いわば、刎頸の友の間柄である飛田社長と前川店長。同じ大阪の大学を卒業後は別々の道へ進み、飛田社長は学生時代からアルバイトに励んだ焼鳥店へ入社。8年間の修業を経て、平成20年(2008)に独立し、中央区谷町6丁目に1軒目をオープンした。郷里の父親が作る出雲そばと自身のこだわる鳥料理で順風満帆な業績となり、3年前、2店舗目の新町店を手がけた。ビジネス客の多いオフィス街の本町や心斎橋近くでなく、新町を選んだのは何故かと、飛田社長に訊ねてみた。


「かつて私が修業した焼鳥店は、新町だったんですよ。この町の雰囲気が好きですし、地域性を分かっていますからね」
とニッチな店づくりを飛田社長は打ち明ける。そして、ここへ常連客として通っていたのが、飛田社長の親友で整体師だった頃の前川店長。当時、島根へのUターン就職も検討していた前川氏に、飛田社長は忌憚なく、店長として働かないかと声をかけた。
「島根人の気質とこだわりが、うちのリーダーには必要です。それに、彼とは学生の頃からずっと、あ・うんの呼吸ですから、任せて安心だったんですよ」
 目と目で語り合うかのようにインタヴューに応じる二人に、島根人らしい素朴な優しさがにじんでいる。
数年後、「出雲そば 炭火やきとり とびた 松江店」が誕生すれば、飛田社長の先祖から受け継ぐ出雲そばと前川店長は、ともに故郷へ錦を飾ることだろう。



      島根の肴、大山地鶏、〆の出雲そばの三拍子に、出雲酒!

さて、まるごと出雲の代名詞である「出雲そば 炭火やきとり とびた 新町店」の平均客単価は、リーズナブルな¥3,500前後。その看板メニューを紹介しよう! まずは、出雲の地酒と堪能してもらえる「練り物3種(¥750/税別)」。付き出しとしてもってこいの珍味で、トビウオを使った竹輪“あごの焼き”、それに野菜を加えた“あご菜天”、そして、日本海で獲れた魚のすり身に赤唐辛子を練り合わせた“赤天(あかてん)”だ。この一皿は、スッキリとした口当たりの純米吟醸とやってみたい。



そして、〆の人気メニュー「5色割子そば(¥1,500/税別)」は、わっぱを分けると思わず喉が鳴る。飛田社長の父親が手造りする自慢の出雲そばに、とろろ芋、おろし大根、揚げ玉、卵、板ワカメの5種類がトッピングされて、食べ応えも充分! むしろ日本酒ツウなら、これをツマミに出雲の地酒を飲みたくなるだろう。筆者は、ぬる燗の純米酒を傾けながら、風味豊かな出雲そばを楽しみたい。



大阪市内のど真ん中で、まるごと出雲を味わえる美酒どころ! 「出雲そば 炭火やきとり とびた 新町店」で、今夜はゆったりと酔いしれてみませんか。

■出雲そば 炭火やきとり とびた 新町店
大阪市西区新町1-8-19
電話:06-6533-5250
営業時間:昼11301400
     夜17002400
定休日:日曜日