2020年4月25日土曜日

寿光イチオシの店 VOL.7 「酒と肴 Sai」

自粛の宅飲みを楽しくする、関西のうまい店の取材記事を、筆者自らご紹介!
北新地「酒と肴 Sai」さんは、ご夫婦できりもりする隠れ家のような、大人の夜にふさわしい美食空間。
選りすぐった食材に、こだわりの酒器や皿・鉢をしつらえ、とりわけ日本酒には大阪錫酒器がうれしい。
極上のラム料理の紹介記事を、宅飲みのツマミにどうぞ。



              VOL.7 「酒と肴 Sai」 (2016年2月取材記事)


       極みのラム肉と魚に酔いしれる、おしどり夫婦の新割烹。

北新地の喧騒を一歩離れた、永楽町北通り。その片隅で、極上のラム料理が味わえると健啖家たちに噂を呼んでいる新割烹が「酒と肴 Sai」だ。日本酒にもこだわるとあって、玄関には錫の店名プレート。店内には、みごとな錫器を飾るケースが据わり、オーナーの村岡夫妻のセンスがキラリと光る。シェフとして腕を振るうのは、奥様の村岡 栞(しおり)さんだ。



「ラム肉は北海道で屈指の石田綿羊牧場から、直接仕入れています。希少なラム肉で、赤身と脂身の仕上がりが素晴らしく、たっぷりと旨味を味わえますよ。ラム好きなお客様からは、うちの肉は他店のようなクセがまったくないとお褒めを頂いてます」
確かに、肉質は驚くほど柔らかく、とろけるような甘さは牛刺しを超えるほどだ! Saiでは新鮮な生肉はもちろん、自家製ダレに漬けたスペアリブなど12種類のラムメニューを提供している。


「ラムは、うちの看板料理になりましたが、木津市場から毎日仕入れる、和歌山産の魚介類も上物ばかりです。どちらも日本酒を名脇役にできるんですよ」
そう言って錫の酒器を勧めてくれたのが、ご主人の将侍(しょうじ)さん。お客様をもてなし、懇切丁寧に料理の紹介や酒のセレクトをアテンドしている。栞さんが銘醸地の広島県西条市の出身だけに、二人とも日本酒への造詣は深い。ただ、流行や人気の酒ではなく、長期熟成、発泡系など料理にふさわしい品質を取り揃えている。Saiのゲストは40歳半ばから70歳前後の男性が多く、辛口ですっきりとした、香り控えめな酒が好まれると言う。ラム料理を含め、魚介料理15種(旬によって入れ替え)、野菜料理20種、酒肴12種を合わせれば、約50種類の美食。個性的な酒膳が、グルメの舌を唸らせているのだ。


        調理師学校の同級生が、二人三脚で夢を叶える。

Saiの常連客が惚れ込むのは料理と酒のみならず、村岡さん夫妻のコンビネーションの良さだ。この世界ではまだまだ若手ながら、北新地の料理の鉄人や酒の巨匠からも一目を置かれているのだ。ゲストに寛ぎと安らぎを醸し出す“あ・うん”の呼吸は、お互い調理師学校の同級生の頃から始まっていた。

「僕は、東大阪の実家が居酒屋でした。卒業後は母を手伝い、ホテルの和食店、給食会社でも修行していました」

と、将侍さんは料理人の血筋のままに進んできた。
「私は卒業してから北新地のステーキ店やケータリング会社に勤めた後、2008年に主人と本町に広島酒限定の居酒屋を開いたのです。でも、直後にリーマンショックが起こって景気が冷え、前途多難のスタートでした」


出鼻をくじかれたと当時を振り返る栞さんだが、二人は苦境を乗り越えて2014年には夢だった北新地にSaiをオープンした。それを後押ししてくれたのは、錫が結んでくれた御縁だと村岡夫妻は声を揃える。
「本町時代から、伝統工芸品である“大阪浪華錫器”を伝承されている今井達昌氏に御支援を頂いています。うちのお客様には、日本酒の旨味を引き立てる錫の不思議な魅力も存分に楽しんでもらいたいのです」
錫器は高価な装飾品ではなく、日用品として使ってなんぼ! そう自負する今井氏の薫陶を受けた村岡夫妻には、優しい錫の輝きがよく似合う。錫の他にも、本町の頃からお客様だった大阪府職員とコラボし、天満切子、金剛すだれなど伝統工芸品に惹かれた。夫妻は、2周年を迎える今年は伝統文化の趣向を凝らしたイベントも催したいと抱負を語ってくれた。

          ラムの甘さに驚嘆! 魚のしつらいに脱帽!

さて、いよいよお待ちかね! Saiご自慢のラム肉の登場だ。選りすぐりの部位の中から栞さんが供してくれたのが「北海道産ラム肉のたたき(¥1,000-/税込)」だ。赤身の美味しさは先に述べたが、脂身の炙りもまた絶品! ひたすら美味しい羊を育てるために、島根県から北海道へ移り住んだ石田綿羊牧場のこだわりが窺える。
クセがない脂の旨さは、後味のしつこさをまったく感じない。栞さん考案のピリ辛ごま塩を薬味に添えれば、熟成酒にもピッタリだ! 


そしてラムと肩を並べるのが、和歌山の網元から送られる旬の魚介類! それらをふんだんに使った「酒肴 お造り盛り合わせ(¥1,520/税込)」は、目にも美味しい贅沢な一皿だ。季節の旬によって品変わりするが、今夜は左から、貝付きホタテのタルタル、ノルウェー産サーモン塩引き造りとハラミ炙り、ヒラメの生ハム仕立てと練りウニ巻き、エンガワ炙りとポン酢たたき、北海道産ミズ蛸の湯引きと吸盤炙り、寒鰆のヅケとモロミ醤たたき、そして付合せは、レンコンピクルスなど豪華絢爛! これだけあれば、たっぷりと日本酒を堪能できるにちがいない。


「割烹というよりも、肩肘の張らない北新地の居酒屋として頑張っています。どなたにも御値頃な店ですから、気軽にいらして下さい」
寄り添う二人の笑顔が、筆者の酔い心地を和ませる。
カウンター5席、テーブル8席、平均単価は一人¥5,000からと、北新地ではすこぶる魅力的だ。
さて、ラム料理と日本酒の新しいマリアージュを、今夜は「酒と肴 Sai」で心ゆくまで味わってみてはいかが。

■酒と肴 Sai
大阪市北区曽根崎新地1-11-9 京屋ビルB1
電話:06-4795-5088
営業時間:17:002600LO フード2500、ドリンク 2530
定休日:日曜、祝祭日

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