2020年4月4日土曜日

寿光イチオシの店紹介 VOL.2 「馳走いなせや」

さて、祇園や上七軒といった名所にはなくとも、私が京都でこよなく愛し、日本酒への愛があふれる隠れ家をご紹介します!
東京から京都へお越しくださる日本酒ファンの皆様、ここは、関西の美酒の坩堝です。

VOL.2 「馳走いなせや」


日本酒と食材の作り手を主役にする、「地産馳走」の割烹。


ゆかしい京町屋と洗練されたショップが共存する京都の烏丸界隈。その三条通りを東へ入った柳馬場に佇む「馳走いなせや」は、築90年を超える町屋を生かした瀟洒な店構え。今や知る人ぞ知る、日本酒とご馳走ざんまいの割烹だ。趣きのある路地を玄関へ歩む足元には、京都の町名が刻まれた陶板がしつらえてあり、思わず都会の喧騒を忘れさせる。生粋の京都人であるオーナー・高田佳和氏の雅なセンスが香る。だが店内に入れば、酒欲をそそる匂いが鼻先をくすぐり、誰しも垂涎してしまうだろう。そのわけは、馳走いなせやのモットーが「酒を手造りする蔵人や、食材を山や海で獲る匠の心を伝えたい」に収斂されているからだ。



「大将(高田氏)の志をスタッフ全員が共有して、一杯の酒、一皿の料理へ生産者の方々の思いが映えるように、真心を尽くしています。私自身、冬場には蔵元へ参り、酒造りをお手伝いしながら勉強をさせて頂いています」
 常連客に人気のカウンター席で、自慢のご馳走を供してくれるのが、料理長の村上聡孝(としゆき)さん。弱冠32歳ながら、高田氏の薫陶を受けて板場を取り仕切る酒肴啐啄の匠である。馳走いなせやには約50種類の料理、40種類の日本酒が用意されているが、その相性の良さを考え、お客様へ提供できるのが村上さんの腕前だ。いわゆる、ありがちな薄味の京料理とは一線を画し、馳走いなせやがこだわる無濾過生原酒ならではの無垢な旨み、濃厚なボディーにふさわしい味付けを工夫している。
例えば、看板メニューの地鶏鍋のダシは、野趣あふれる鶏肉の旨味や脂を包み込む甘辛い醤油ベース。もちろん、地物野菜の滋味とも合わさり、箸が進むごとに冷酒のグラスを飲み干してしまう。
「日本酒も食材も、当店では地元関西の生産物を優先します。つまり、季節の旬や産地直送の本来の姿。”地産馳走”ですね」
 それが高田イズムの真骨頂と、村上さんは胸を張る。



蔵元と酒を愛し、日本酒の旨味を探求する料理長。

さて献立だけでなく、日本酒の造詣にも非凡な才を感じさせる村上さん。調理師学校を卒業後、フレンチや和食を数年経験しているが、馳走いなせやとの出会いが自身の料理人哲学を開眼させたと言っても過言ではないようだ。
「毎年、蔵元へ参るようになってから、お客様との日本酒交流を催す喜びを実感しています。杜氏や蔵の方々の熱い思いが、馳走いなせやに満ちていますよ」
 休日には、伏見や京都北部、滋賀県の蔵元を招いての昼下がりの日本酒会を催し、村上さんの料理が膳を彩る。
むろん、村上さん本人の舌で吟味した蔵元酒にふさわしい食材、献立、味付けを編み出さねばならない。そして、参加者からは絶賛の声! 蔵元や杜氏も絶妙のマッチングに舌を巻くそうだ。筆者が思うに、村上さんは、かつて他店の修行では知り得なかった無濾過生原酒の旨さの魅力にとりつかれたにちがいない。それが証拠に、合わせる地元野菜の旨味にもこだわると言う。
「野菜は、京都の蔵元さんの酒造好適米を作っている農家からも仕入れています。例えば、伏見の農家の九条ネギ、綾部市の農園の賀茂ナスなど、甘みの濃い原種を仕入れています」
 単なる京野菜ではなく、日本酒の酒造好適米を育てる
のと同じ土壌で収穫した野菜を使う徹底ぶりだ。また、魚介類は、オーナーの高田氏が全幅の信頼を置いている伊勢の漁師から地物を仕入れていると聞き、こちらも日本酒ツウには見逃せない。



濃厚な3種の地鶏鍋、淡白な生麩の煮物が好対照!

では、馳走いなせやの一番人気を誇る「地鶏のすき焼き(¥1,800/税別)」からご紹介しよう。柔らかい歯ごたえ、ジューシーな旨みを3種の地鶏で味わえるのが特長だ。丹波産の村田地鶏、篠山産の高坂地鶏、そして亀岡産の七谷地鶏(しゃも)を取り合わせて、九条ネギや京豆腐とともに濃厚な甘辛醤油で煮詰めている。鶏肉だけでなく、九条ネギの甘さと食感も絶妙だ! 漬ける卵は当然のごとく地卵で、割った途端に黄味がプルンと立つほど新鮮。これには、もちろん濃醇な無濾過純米酒を合わせたい。また山廃仕込みなど、酸味のある酒にも合わせてみてはいかがだろう。そして、2品目は純粋な京風の「生麩のあんかけ(¥600/税別)」。女性に人気の献立だ。老舗の生麩を使った淡白な味わいで、ホロリと苦みのある菜の花を添えている。これには、スッキリとした口当たりの純米酒がふさわしいだろう。



また、馳走いなせやでは、無濾過生原酒におすすめの季節の旬や珍味を15種類の肴にして、2次会のゲストにも好評だ。
春には中庭の新緑を愛でながら、夏には夜風に憩いながら冷酒を傾けるのもいい。平均客単価は¥6,000~¥8,000。座席数は70席(カウンター12席、テーブル・座敷等58席)と余裕の空間。家族やグループでの京都散策の折にも、利用してみてはいかがだろう。

馳走いなせや http://chisouinaseya.com/
京都市中京区三条柳馬場上ル油屋町93
電話:075-255-7250
営業時間:ランチ 11:3014:00
ディナー 17:0023:00L.O.22:30
定休日:不定休


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